【書評記事】かえるくん、東京を救う(村上春樹)読んでみた!

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こんにちは!Erimaです。

最近買ったタイツの色と持ってたパンプスの色が偶然全く同じ色味で嬉しかったです。

 

ところで皆さま、私が以前書いた輪るピングドラムの考察記事を覚えておられるでしょうか?

まだの方はここからどうぞ

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この中の後半(何話だか忘れましたが)の図書館のシーンで陽毬ちゃんが探していたのがこの「かえるくん、東京を救う」でした。

 

絵本なのかな、と思ったらまさかの村上春樹の著作であり、しかも内容のモチーフが阪神大震災アフターマスだというので、いそいそ書評してみました。

 

「かえるくん、東京を救う」村上春樹

村上春樹といえば、その独特な語り口で有名ですが、彼特有の文章スタイルは一度英語で書いたものを日本語に直したものが元になっていると聞いたことがあります。

 

一度Twitterでも村上春樹口調の子育て大喜利が流行ってましたよね。Twitter民の民度高すぎ。

 

そんな村上春樹の文章、じつはこれが初読というわけではなく、私は一度ノルウェーの森を読んだことがあります。

 

否、読みかけました。

ごめんなさい、最後まで読んでないのです。。

 

内容が困難というより、空気感がまどろっこしくてあんまり好きじゃなかったのもあり、読破できなかったのです。

 

なので今回は短編でよかったなーと思いました。

 

寝る前の10分くらいで読み終わります。

私が借りた本は「はじめての文学」シリーズなので小学生とかそのあたりの小さい子向けになってる本でした。

 

そのせいで借りに行くのめっちゃ恥ずかしかったです。ちっちゃい子の本のコーナーって棚が腰より低いんですよね。

 

ちょっとした巨人気分ちびっこたちの視線を感じながら借りました。

 

肝心の内容(ネタバレ注意!!)

結局、かえるくんって実はみみずくんだったの????と思ってしまいました。

全体的に皮肉っぽい雰囲気はありましたが、かえるくんが助けを求めた人物が片桐さんというとっても平凡なサラリーマンのおじさんであることに共感というか親しみを覚えました。

 

最後まで読むとわかるのですが、この人選は唯一の希望でしかないといった感じも受けました。

 

みみずくんと突如戦うことになった片桐さんでしたが、肝心の戦闘シーンは本書の中では描かれていません。片桐さんはそのころ病院のベッドにいましたし、かえるくんは戦った後のぼろぼろの姿で登場するのですが、どこか様子がおかしいのです。

 

かえるくんは混濁していく意識の中で、『混沌に還っていく』だとか『自分は非かえるくんの表象なんだ』だとか『機関車が来る』などと呟きながら眠ってしまう(?)シーンもなかなか印象的です。

 

また片桐さんも最後に「機関車」と呟いていました。

ところで機関車と聞いたときに、 私は真っ先に銀河鉄道の夜を思い浮かべてしまいました。

 

銀河鉄道の夜もなかなか考察しがいのある作品だとは思いますが、あの鉄道は天国への乗り物というのが通説だと思います。

 

もしこのかえるくんと片桐さんの口から出た機関車がこの鉄道だとすると、彼らの眠りは一時的なものではないのかもしれません。

 

平たくいえば、死んでるのではないか、というのが私の考察です。

それにしても、阪神大震災後のアフターマスとはどの辺りに表現されているのでしょうか。

 

ちなみにアフターマスとは

災害や戦争の後の状態

Weblio

 

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だそうです。

 

災害後の日本の様子がどのようにかえるくんや片桐さんと重なるのでしょうか。

阪神大震災が起こったのは1995年1月17日です。東日本大震災が起こるまで阪神大震災日本で最も被害の大きな災害でした。

 

ところで1995年に起こったもう一つの大きな悲劇を覚えておいででしょうか。鋭い方はもうわかりますよね、そう地下鉄サリン事件です(1995年3月20日

 

余談ですが村上春樹は他にも、地下鉄サリンを題材とした小説としてアンダーグラウンドという本を執筆しています。未読ですが。

 

私にはこの二つがリンクするものというか何か近しい運命のようなつながりを感じるのです。

 

私は年代的に、この阪神大震災のころまで生まれていません。

 

けれど想像することはできます。

インフラが途絶え、情報も途絶え、ライフラインの途絶えた日本には絶望と阿鼻叫喚の漂う地獄絵図だったことは想像に難くありません。

 

そんなとき、きっと人々は生きる価値や自分という存在に無力感というか疑問のようなものを感じたのではないかと思うのです。

 

アウシュビッツ収容所に収監された経験のある精神科医のエーミール人生には意味があるといった偉大な人物ですが、今日の日本においてこの言葉は少し夢見がちで眩しすぎるものに見えるということも事実です。

 

これはもしかして、あの大きな災害が残した爪痕なのかもしれません。

 

災害にあっていない私がそう思うのですから、実際に災害にあった方々はなおさらそう思ったと思います。

 

今まで自分が築いてきたものが全て壊れ、奪われてしまう。

 

物質的なアイデンティティの崩壊とでもいうのでしょうか。とにかく人々はかえるくんのように傷つきました。

 

機関車が見えるほどに疲れてしまった人もいたでしょう。本当の意味で極限に置かれると人は考えるというよりも感覚的に何かを悟ると聞いたことがあります。

 

かえるくんが最後に言っていたのもその一種でしょう。

 

そしてここまでつらつら書いていて思ったのですが、かえるくんとは実は片桐さんの頭の中の住人なのかもしれません。

 

実際彼以外には見えないわけですし。

 

客観的に考えて、ただの金貸し業の営業のおじさんが東京を救えるような人材に選ばれるとも考えにくいです。

 

それからかえるくんは片桐さんのことを高く評価してますし。

 

あれは片桐さんの願望なのかな、と思ってみたり。

 

もしかしたら、片桐さん自体がというか、片桐さんのいる世界そのものがバーチャルな世界で、現実のものは一つもないのかも。

 

だんだんわからなくなってきました笑笑

 

話を変えましょう。

みみずくんのことです。

 

みみずくんは地下深くに眠っていて、たまに蓄積した怒りを放出する、という設定でした。

 

これって思いっきり自然の在り方じゃないでしょうか???

 

少々アニミズムがかった言い方にはなりますが、日本風にいうなら大蛇みたいなことですよね、これってきっと。

 

で、それをかえるくんと片桐さんが倒す。

 

ただかえるくんはどうやらみみずくんとは引き分けまでしか持って行けなかったようでした。

 

引き分け、というのは本来正しい言いかたではなくって、自然からしっぺ返しを受けたというのが正しいのではないだろうか、とつい考えてしまいます。

 

みみずくん自然なら完璧に倒すことなんて無理でしょうからね。

 

結果的に見るなら、かえるくんと片桐さんは物語の中では東京を救いました。

しかしながら、その行為は本当に世界の救済になったのでしょうか?

結局世界は何も変わらず、ただ自分自身の存在や価値を疑いながら消えていってしまったのではないでしょうか。

 

まとめと感想

物語はわかりやすいのに、どこまでも深読みが出来てしまいそうな話、それが「かえるくん、東京を救う」でした。

 

やっぱ村上春樹は難しいですね。それから阪神大震災アフターマスを踏まえながら考察したつもりでしたが、いかんせん阪神大震災に対する自分の知識不足を痛感させられました。

 

日本に住んでいる以上、こういった痛みの記憶は風化させないようにしていきたいなと思った次第でした。

 

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