【書評記事】『あなたの個人情報が盗まれる』現代に生きるための必読書を読んでみた!
こんにちは!erimaです。今回の記事は、書評記事となります。
タイトルは『あなたの個人情報が盗まれる』櫻井よしこ(小学館)です。具体的にはマイナンバー制度(住基ネット)の実態調査を行なっている著者が、その制度の惰弱性を指摘した内容となっています。
作者のプロフィール
- 住基ネットに反対する会を設立(2000)
- 長野県の本人確認情報審議会の委員(2002)
これらに実際に関わり、マイナンバー制度の問題点を指摘したのが作者の櫻井よしこさんです。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/櫻井よしこ
問題点① 91%の自治体が“メリットない”と回答
筆者によると、この制度が導入されたことによる自治体のメリットはほぼないに等しいといいます。
その原因としては
- 予算
- コスト
があります。国はこの住民基本台帳ネットワーク(以下住基ネット)を地方自治体に自治義務のあるものとして、法律を作りました。
ですから、このネットから個人情報が流失したとしても始めた国には一切責任がなく全て自治体の責任にされてしまうのです。
また法定受託事務でもないため、特別の予算が降りるわけでもありません。地方は自分らの財源の中から住基ネットを運営・管理する費用を捻出しなければならないのです。
これは実際とても大変なことです。ただでさえぎりぎりで予算くりをしている自治体にとってこの制度はおおきな制約を与えるものでしかないのです。
さらに、技術面でもコストがかかります。役場の職員全員が必ずそのシステムに詳しいわけではないため、どうしても管理が杜撰になったり、セキュリティそのものを業者に丸投げしたりしているといいます。
財政難の場合、業者に頼むプランも値段なりのものでしかありません。そうした対応によって重大な情報漏洩があったとしても、それを確認できる人や阻止できる人が現場にはいないことが多いのです。
筆者はこのような状態のまま、住基ネットを運営していくことは大変危険であると断言しています。
問題点② 無責任な国の態度
このような問題点に対し、国は『住基ネットには、ファイヤウォールもありセキュリティ面の問題はない』と公言していました。
しかしこれは誤りです。筆者が担当した長野県の自治体では、住基ネットのシステムを物理的にインターネットに接続していたところさえあったといいます。これは、ネット回線さえあれば、内外の誰でもが情報を引き出せることを意味しています。
また担当につく職員も2、3年おきに変わるため、ますます個人情報漏えいのリスクは高まるばかりなのです。
また実際住基ネットによる個人情報は民間で活用されています。それはDMや警察、さらには金融機関にまで活用可能だということが分かっており、国はそれを推奨している節すらあります。
人間が1つの番号によって管理される社会は、とても文明的とは言えません。むしろ収容所や刑務所を大規模にしたような支配を表しているのです。
さらに日本全体でWindowsが多く使われているように、国や自治体もWindowsをつかわれています。彼らが導入しているサーバーはマイクロソフト公式がもうメンテナンスやサポートをしないと言っている古い型を採用しています。
これでは、重大なハッキングやウイルス・ワームによる攻撃があったときに手の打ちようがないことを意味しています。
問題点③ IT先進化できない日本
日本政府がマイクロソフトに依存し、穴だらけの住基ネットを運営する一方で、中国政府は『ノー・マイクロソフト』を強く打ち出しています。
中国がこういうのには訳があります。エシュロンという単語を聞いたことがあるでしょうか。エシュロンとはアメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドの国の間で作られている国際的な通信傍受システムです
これによって、自国に利害のある情報が同盟国間で共有されるわけです。そのため、
中国は自分で思考し、実行するコンピューターの重要性を知っているのです。
実際、中国では赤旗LInux(レッドフラッグ・リナックス)という独自のシステムを確立しています。日本のように、既存のシステムを与えて使えるようにするだけでは情報社会の担い手としては不十分なのです。
問題点④足りないプライバシーへの配慮
最大の問題点は、法的な配慮にばかり気をかけ、技術的な保護が追いついていないことにあります。
そもそもネットの世界には、オリジナルとコピーの差異がありません。したがって、一度流失してしまうと取り戻すもしくは消すのが難しいと言われる訳です。
また住基カードによるプライバシーの侵害も問題です。
住基カードにはsuicaと同じようなICチップが含まれていて、それを読み取ることで様々な情報のやり取りができます。
しかし、これは同時に私たちの行動が逐一データ化され、監視されることをも意味しているのです。私たち一人一人に番号がつけられるということはこういうことなのです。
まとめ
当初マイナンバー制度が導入されたとき、身分証明がいらなくなる・事務手続きが減るといった話を聞き、情報化した社会だなあとしか思いませんでした。
しかし、実際にこの本を読んで国の卑怯さや苦しめられている自治体の実態を知ることができました。
私はこういった悲しいことはすべて、日本が過剰に中央集権化した代償であると考えています。これから必要になってくるのは、地方の分権化ではないでしょうか。
国に従うほかない弱小な地方が、対等に渡り合えるだけの力を得ることが、より民主的で市民の意思が反映された社会になる鍵だと思います。
そのために私たちが個人規模で何ができるのか。
それは、情報を鵜呑みにしない・自分の頭で考え、判断することでしょう。そのために歴史を知り、思想を学び、応用して自分のものにしていくことが大切なのだと思います。